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『Charlotte』漫画版感想、単語帳はアニメの四倍速く現れる

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 最近Amazonが執拗に『Charlotte(シャーロット)』漫画版をおススメしてくるので鬱陶しいなクソアニメが死ねよと思っていたのだけど、レビューを覗いたら意外と星が高くて実際に中身を読んでみたらアニメに足りない部分を補完しつつ悪くない展開をしていたのでそういう話。
 ※どうせ気にするやついないだろうと思ってアニメ版、漫画版、共にネタバレしています。

概要

 まあ今更Charlotteのストーリーを説明するまでもない(忘れている人間は多いかもしれないが)と思うので、あくまでも漫画版の概要を話します。

 漫画版は原案がもちろん麻枝准、作画は池澤真と津留崎優(作画担当と原作担当でやっているらしい)。電撃G'sコミックで連載され、つい最近完結した。全六巻で基本のストーリーはアニメと同じだが、どうやらアニメでは描ききれなかったシーンを入れたり、無駄なシーンを省いて代わりに伏線となる描写やキャラの掘り下げを行ったりと構成面でかなりクオリティが上がっている

 そもそも前提として、アニメCharlotteはクソアニメだと俺は思っている。見どころのあるタイプのクソではあるけれど、完成度という点で見れば普通に低い。細かいところは後述するが、簡単に言うとストーリーの序盤から中盤、終盤への流れが雑すぎるという点、そしてぶつ切りな話を無理やり進めているせいでキャラの掘り下げが甘い点。その辺だろうか。
 それっぽくやりたいシーンを詰め合わせたおかげで一話ずつ見れば面白い部分もあるが、終盤はポッと出の悪役に掘り下げの薄い重要キャラが殺されて主人公の兄がキレたり、最終回の主人公を支える重要アイテムとして慌てて百均で買ってきたとしか思えない単語帳が最終回直前で滑り込んできたり、ストーリー構成があんまりにも酷いというのは、まあ見たことのある人間ならわかると思う。

 で、漫画版ではその辺のフォローが上手い。アニメ時点でプロットにはあったけど尺的に削られた部分を入れなおした部分もあれば、普通にオリジナルで加えられたシーンもあるらしく、その内容がはっきり言って有能。それでも終盤の無理くり展開はさすがに扱いきれてなかった感があるけれども、足りていない部分の補完としてはかなり高水準と言える。コミカライズの存在意義なんてほとんどないと思ってたけどこれだけあれば十分に作られた意義がある、そんな感じ。

主な追加、修正点

 とりあえずぱっと思いつくところを羅列していきましょう。

追加点

・冒頭からすぐに乙坂 隼翼(主人公の兄)の存在が示唆される。
単語帳が原作でいう三話の直後(漫画版二巻)時点で登場する
・↑の単語帳に絡めてテスト勉強という青春っぽいエピソードが差し込まれる。
・↑のテスト勉強では主人公の低スペック&クズメンタルが強調される。
・隼翼や熊耳の愉快な仲間たちが暗躍しているシーンが描かれている。
・柚咲のライブエピソードが追加。
・銭湯エピソードで高城の筋肉と美砂の蕎麦が追加
・主人公の母親と再会するシーンが追加。
・友利とのライブデートが増量。
・妹救出後に兄と愉快な仲間たちが生徒会メンツと交流するシーンが追加。
・降霊術の力を使って死んだ熊耳と兄を再開させるシーンが追加。
・エピローグが追加。

削除点

・五話の大半(スカイハイ斎藤回)が省略。
・七話の鬱落ち主人公がカップ麺をめちゃくちゃ食う描写が減少。
・白柳さん(一話に出てきた女)の再登場が削除。
・ZHIENDのボーカル回が消滅。
・ZHIENDのライブシーンがかなり減量。
・研究者のおじいさんの話が削除。
・アニメ10話における兄の過去回想と妹救出回がかなり省略。
・というか10~13話が全体的にかなり省略。

 という感じで羅列してみた。もちろんすべて事細かにチェックしているわけでもなければすべてを詳細に書く必要はないので、気になる部分を挙げている。大きな傾向としては、キャラの掘り下げや青春的な日常シーンが追加され、ストーリーにあまり関係してこない人物(斎藤回、白柳やボーカル)の話はカット。そして最終回付近のテロリストがどうだとかその辺の話はだいぶ駆け足となっていることがわかる

キャラの掘り下げについて

 一括りずつ見てみよう。まずはキャラの掘り下げについて

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主人公に関しては言わずもがな最終回の最重要キーアイテムであるところの単語帳をかなり早い段階で伏線として用意し、能力ナシではテストはボロボロ、追い詰められて能力を使ったカンニングをするも、本人としては罪悪感に苛まれつつ不甲斐ない自分に落胆するというシーン。汚ねえ字で自作された単語帳がゴミ箱に投げ捨てられている絵は、最後まで単語帳を大事に抱えていた最終回の乙坂への対比としてめちゃくちゃ優秀。

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 なぜこれを本編に入れなかった?

 それから他のキャラについても。Charlotteにおいて柚咲と美砂は友利に次ぐヒロイン枠で、柚咲に至ってはアイドル設定で歌まで用意されていたのにアニメでは割と空気な扱いに終始していた。しかし漫画版ではライブ回が用意され、厚めの日常シーンでキャラ描写に力を入れられている。
 そもそもCharlotteのテーマの一つとして、前半は青春、後半は能力絡みのいざこざ、というまあいわゆるKeyによくある後半から一気にシリアスが始まるあれがある。アニメだと1~6話の途中までがそれに当たるわけだけど、ぶっちゃけ6話分の厚みがない。薄い、ぺらい、とにかく適当な日常回を入れようとした結果の代表格が、漫画版で消滅したスカイハイ斎藤回であって、高城と柚咲なんて後半出てこないこともあってほぼ空気。それが漫画版では1~4巻までが青春編となっており、これはアニメ換算だと8話分の割合に相当する。そして8話分にきちんと見合う厚みをもってキャラ描写をしているがために、後半でそれが〝崩壊〟する重みが増していると、そういうわけ。

 あとあれだ、友利絡みのシーンに結構気を遣っていて、主人公が友利を好きになる前準備を徹底的にやっているなという印象。友利とのライブデートもそうだけど、ちょくちょく入ってくる友利と主人公の絡みで友利が可愛く見えるようになっているのはすごく良い。ヒロインにヒロインさせるのは当たり前のようであって難しいからね。

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  ついでに愉快な仲間たちの話もそう。アニメだとマジでぽっと出の兄勢がちゃんと裏で動いてたんだなってのをきちんと書いてるのがいい。脈絡のない話はクソ。特にお話のテーマに関わる部分はちゃんと伝わるように表さないと元も子もない。その上でこの↓のページを見てほしい。

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 愉快な仲間たちが裏で動いているのを書きつつ、熊耳が主人公を更生させようとしているのを説明している。ちなみにCharlotteは能力を自分のためだけに使っていたクズ主人公が更生して、世界とみんなと好きな女の子のために一人でビッグなことを成し遂げるまでに成長する物語なんだけど、その最初の段階である主人公が頭悪いクズでメンタルもゴミで周りから舐められたり心配されたりしつつも見守られているっていうのをこの時点から示唆しているってのが強い。こんなに主人公を近くで暖かく見守ってた熊耳が主人公自身の失敗で死んでしまうんですね。アニメだとなんかどうでもいいやつが死んだなぐらいの感触だったけど、漫画版だとまあもうちょっと感傷的ではあった。

カットされた部分と終盤の駆け足について

 あんまり語ることは多くない。カット部分についてはなんの疑問もなく、いらん部分が切られただけだからね。スカイハイ斎藤は言わずもがな、ZHIENDもストーリー上悪くない立場にいるのにあんまり重要な活躍はしないし、ZHIEND回が消えたのも納得。まあZHIENDの音楽は記憶を取り戻すトリガーにもなるところだし、ただ好きだったってだけじゃなくもうちょっと特別な要素を盛ってもいいと思ったがそれはアニメ版の脚本に言うべきところ。白柳さんの再登場とかもいらなかったし問題ない。

 ちなみに俺は斎藤回の次に野球回が要らないと思っているのだけど、漫画版だとカットはされておらずちょっと短いかな?ぐらい。なぜか。それは、野球回は初めて主人公が能力を使わずに戦ったシーンだからです。
 キャラの掘り下げに力を入れている漫画版において、テスト勉強回で失態を犯した主人公が、その反省を活かして奮闘し成長する回がここに入ってくることは必然。アニメみたいに30分だらだらと尺を食うことなく、スマートに、必要なことをやっていく。これはすごいことですよ。

 で、ここで全体の巻数に対する尺の割り当てについて説明をしましょう。
一巻→アニメでいう1~2話
二巻→アニメでいう3話+テスト勉強回
三巻→アニメでいう5話+ゆさりんライブ回
四巻→改造されたキャンプ回+アニメでいう6話
五巻→アニメでいう7話、9話~10話の途中まで
六巻→10話の途中~13話
 おわかりいただけただろうか。アニメだと半分以下の尺である6話までに三分の二を使い、残りの7~13話を三分の一に凝縮している。六巻に至っては3.5話分が詰め込まれており、テロリストが現れたと思ったら熊耳が死んで主人公が海外へ旅立ち友利と恋人になっている。
 せっかく前半を丁寧に仕上げたのに肝心の終盤があまりにもぺらい。逆を言えば、前半に尺を割きすぎた顛末がこれということか。アニメには1クールというわかりやすい制限があるけど、漫画版にも最初から六巻までという制約があったのかもしれない。まあコミカライズをだらだらやるのってあんまりよくないし、それはいいことだろう。が、終盤の展開が良くないことには変わりない。正直アニメを見ていたから脳内補完できたものの、漫画版だけで話を追っていたら超展開クソ漫画として酷評してたかもしれない。それぐらい速い。特に最終回は本当に速い。最終回だけはアニメでもう一回見たくなったレベル。打ち切りか?ってなるよ、これは。

単語帳について

 Charlotte単語帳アニメだというのは周知の事実だろう。それはOP曲に何度もかみ(神と紙にかけたダブルミーニング笑)と出てくることや、EDの一枚絵、そして隻眼の死神と化した主人公が大事に抱えたそれからも容易に想像できる。

 というのは嘘です。

 ぽっと出の紙束が単にキーアイテムの座に現れるぐらいぺらぺらで雑なクソ展開をしてるアニメがあるらしいぜ!っていう意味で俺はCharlotte単語帳アニメだと揶揄していた節があり、決して単語帳をリスペクトしていたわけではない。それは間違いがない。一番のぽっと出はテロリストでも兄でも「まさか……最後の能力者の力が〝勇気〟だなんてな」でもなく、単語帳であり、その単語帳が物語上重要な位置を占めているというストーリー構成力の無さに対して、俺はクソアニメのことを単語帳単語帳と楽しく語っていたのである。(ブログでは一ミリも触れたことがないのでこれを読んでるオタク共にはそれこそぽっと出の情報だろうが) 

 しかし、今回この漫画版の出現により、単語帳は見事に成仏した。いい加減単語帳を赤文字にするのも面倒になった頃合いだった。
 単語帳とは、自分で紙の表に英語を、裏に日本語を書くことにより英単語を覚えられる勉強道具である。一枚一枚に自分で読みやすいように文字を書き、それを使って一語一語地道に単語を覚える。英単語の暗記というズルの効かない科目において、着実に自分を成長させるためのアイテムである。
 かつて試しに自分で作って、やっぱり無理だと投げ出した単語帳だったが、成長した、あるいはこれから旅の中で成長する乙坂有宇は、好きな女の子が作ってくれたそれを離すことなく握りしめて目的を果たす。麻枝准曰く、友利は乙坂有宇のことが好きで見送ったのではなく、乙坂有宇が帰ってきてくれて初めて彼のことを好きになったのだという。カンニングで自分を強く見せ能力で人気の女の子と付き合おうとするクズ野郎だった乙坂有宇が、命を賭けてカンニングもクソもないような相手と戦う。能力者から一人ずつ能力を奪って、地道に世界を旅するその目的は、大勢からちやほやされたいとかいうふわっとしたものじゃなくて、ただ単に一人の女の子から好かれたいというだけの、青春っぽい感じのそれ。要するにこれこそが真の単語帳アニメであり、単語帳漫画である。

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Charlotte(1) (電撃コミックスNEXT)

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