くだらねえオタクの話をする

『風が強く吹いている』感想、お前ら箱根駅伝ちゃんと見たことあんの?

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 俺はないね。
 だいたいあれだよ、正月に実家で垂れ流してるからそれを見かけるぐらいで、通して全部をちゃんと見たことはない。そもそも走るだけってのがつまらないし、それを外から見てて何が面白いのかって思う。
 おまけにテレビ局がやたらとドラマ仕立てを意識して、レースの途中で故障した選手が棄権するかしないかみたいな光景を涙ながらに放送するのなんかマジでくだらない。たすきを繋ぐってワードに酔ってるだけじゃないかって感じがして、どうにも好きにはなれそうにないんだよな。

 そういうわけで、『風が強く吹いている』のアニメを14話まで見て、原作と映画にも触れた俺がその比較をしつつ感想を話していきたいと思う。

概要

 原作は三浦しをんによる小説。一巻完結だが、文庫本だと600ページ以上とそれなりのボリューム。2006年に原作が出て、2009年に実写の映画化。それからだいぶたった2018年になぜかアニメ化。

 内容としては、大学のオンボロ学生寮である竹青荘に住む十人が、そのうちの一人であるハイジを中心として、ほとんど初心者の状態から箱根駅伝を目指すというもの。もちろん十人全員が乗り気なわけではないので、序盤はいわゆる「メンバー集め」的な展開から始まり、中盤はトレーニングや記録会を通してタイムを上げていくお話、そして終盤は箱根駅伝本番の最初から最後までを描ききる。ちなみにアニメだとまだそこまでいってないけど、箱根駅伝出場は無理だったよ……という展開にはならずその辺はちゃんと達成します。

 ただ素人集団が一年で箱根駅伝出場、なんてのが現実的でないのは当然。そこをファンタジーでなくちゃんとしたトレーニングにより実力をつけて出場するお話なので、箱根駅伝を目指す過程が結構ちゃんと描写されていたりする。原作なんかだと節目ごとにトレーニングメニューやメンバーのタイム一覧が出てきてその辺に気を遣っていることが伺える。まあ俺は陸上経験なんか皆無なので本当にそれが現実的かはわからないが。

 で、どちらかというと原作はメンバー集めがスムーズで、陸上競技としての描写が中心。逆にアニメ版は尺の長さを生かして1クール目のほとんどをメンバーが定着するまでに費やし、キャラ描写に力を入れている。映画版は二時間にまとめるため、細かいところは削って代わりにエンタメ的な面白さが重視されている感がある。

 原作に近いのは映画よりアニメ版の方。でも映画も面白いし、なによりプライムビデオで配信されてる。というかアニメ版がプライムにないのはなぜなのか。

キャラクター

 陸上経験者だが故障明けのハイジと、同じく陸上経験者でエース級の実力を持つ走がチームの主力。それ以外の八人は運動部経験者だったり黒人だったり山奥の秘境出身だったりと素質のある者から、ニコチン中毒クイズ王オタクなどの運動不足まで色々。

 とりあえず箱根予選会における出場条件である5キロ17分以内を目指すにあたって、元運動部とかはともかく運動不足組がこれをクリアできるのか? というのが問題。映画版はこれを上手く解決していて、「竹青荘は一応陸上部の寮になっているので、体裁を保つために寮生は毎日5キロを走らなくてはならない」という設定が追加されている。要はまったくの素人ってわけでもないし、メンバーが箱根挑戦を受け入れやすい土台にもなってるので、尺の短縮を考えても賢い改変だと思う。
 逆にアニメは、上でも書いた通りメンバー集めの段階でかなり尺を使ってる。原作だとあまり触れられなかったキングの就活エピソードに話数を割いてるし、王子なんかはかなり顕著。まあ元が一年かけて箱根を目指す話なわけだから、じっくりとキャラ描写して説得力を持たせるのは悪くないと思う。
 ただぶっちゃけ王子の運動音痴具合はやりすぎだろ。フォームがおかしくてそれを矯正するエピソードは別にいいけど、元のフォームがおかしすぎる上に矯正した後でも普通に変だし、なによりアニメ版だと30分切るのですら一苦労だったところが、原作では最初の時点で30分は切れている。元の設定でも十分厳しいのに、どうしてそこまで王子をウンチにした? 尺が余ってるから適当に改変したんじゃねーかって感じで、そこだけはアニメ版に不満がある。

 ついでに映画版だと各キャラのエピソードに追加はないけど、代わりにちょっと変わってるヤツが何人かいる。キングが常に早押し帽子(?)を被ってるのが結構キャラ付けとして面白くて、それをニコチャンが作ってあげたって設定が好き。ユキは最初から素人としては早い方で、走に対して喧嘩腰な辺りが本番での活躍に繋がってる。神童は走り終わった後のエピソードが映画で追加されてて濡れる。映画は映画で良いところがあって面白い。

 で、あとは走の高校時代の話。なんで走が問題を起こして大学では陸上部に入らなかったのか? ってとこはどのメディアでも同じだけど、ここがさらに掘り下げられているのは、アニメではなく原作の方。アニメは他のキャラのエピソードを増やしてるけど走の内面はあまり掘り下げられてないんだよな。
 具体的にどういうところかというと、走が感じる部活で走らされることへの苦手意識について。これを原作だと早い段階で、ガチガチに管理されて走るのは窮屈だし、速いからって顧問に特別扱いされるのもクソってな風にモノローグで語ってる。ことあるごとに走が高校での部活とハイジのやり方を比較してるし、回想以外のところでもその辺の話を出してるから走が問題を起こしたことに説得力があった。まあこの辺は活字媒体の強みもあるだろうけどね。
 あとはハイジが竹青荘で箱根を目指そうとした理由についても、完全管理型の高校時代とは違う、別のやり方があるってことを証明したいっていうのが最後らへんに明かされている(アニメだとまだそこまでやってない)。

なんで箱根駅伝

 最初の話に戻ろうと思う。

 十人で一つのたすきを繋ぐということ。この良さみは、そこに至るまでの過程ありきなんだと思う。そりゃね、ぽっと出の若者が寒そうな格好で遠いところを走ってるぐらいじゃ人は感動できない。だから俺は今年の箱根駅伝も別に見なかったし特にこれからも見ようって気にはならない。

 ただこの作品は、その過程をちゃんと書いてるから面白い。もちろんフィクションだからそれはエンタメ的な面白さに昇華されているわけだけど、やっぱり一緒に走る仲間が集まって、みんなで一緒に練習して、そのバックグラウンドがあるからこそ、その仲間とたすきを繋ぐことに意味が生まれるってのは確かにある。
 走なんかがちょくちょく言うのは、「走っている間は一人だ」ということ。まあ陸上競技は基本ソロプレイなんでね。でも一人で走っている結果をみんなで共有できるのがこの駅伝という競技。人に合わせるのが苦手で協調性皆無の走が、確かに走っている間は一人なんだけど、その喜びを仲間と分かち合うことができるのが駅伝ってわけ。

 あとハイジの存在なんかはもうそういう意味でも大きい。故障して走れなくなって、走ることを好きではなくなって、それでもやっぱり走りたいぜって人間がそのためだけにメンバーを集めてチームを結成する。ハイジは一貫して走るためだけに動いてるんだよな。練習のためにバイトを強制的に辞めさせるし、キングの就活に関しては完全に放置だし、王子のコレクションを捨てる意思もある。けどみんなに走ってもらうためなら飯も作るし環境作りも完璧にやるし王子を釣るために漫画の名言も覚えてくる。
 正直、キングの就活に対して完全に無関心なのはかなりのクソ野郎だと思うけど、その辺をあまり突っ込まれないのは彼の行動原理がはっきりしているからだし、メンバーがついていくのも、最終的には十人全員が箱根駅伝を走るための人間になっていたからだと思う。そこまでやるからこそ、走る感動ってのが生まれる。こたつでみかん食ってるやつとは違う世界が見えたっておかしくない。

競技としての部分について

 あと原作読んでて面白いなって思ったのが、箱根駅伝に至るまでの記録会や予選会のシステムや、長距離走のトレーニングの話。それから本番での区割りの話とか、各コースの走り方についての描写とか。

 たぶん箱根駅伝って言葉を知らんやつはいないだろうけど、予選会の存在はあんまり知られてないと思う。少なくとも俺は知らなかった。長距離の練習とかも長く走ってるだけちゃうんかって感じだったから、作品の中でそれを解説するような内容があったりするとほーんってなる。そもそも陸上競技の作品に触れるの自体が珍しいんだよな。

 駅伝本番ではそれぞれの区の役割とかコースの特徴に違いがあったりして、それぞれの区を全部書いてるから原作だと本番だけでもかなりの文量がある。ぶっちゃけ、走ってるだけのシーンをよくこんなに面白く書けるなってのは感心する。
 特に好きなのは六区の山下り。たぶん見どころとして書かれてることもあって疾走感があるし、山下り独特の普段とは違う走り方、あのなんか体重移動がどうとか滑りそうで云々みたいな、走ってるだけなのにかっこいい。すごい。

まとめ

 面白いです。原作を読んでおいてよかった。書いた内容を見ればわかると思うけど俺は原作推しね。
 ただアニメもなんか力の入れ所がたまに違うんじゃねって思うことはあるけど、おおむね原作通りだし丁寧に作ってあるし、今期の中でもだいぶ強い方。一番最初に絵を見たとき腐女子向けかって思ってスルーしたのはかなりのミスだったね。プライムで配信してくれないから、俺は後から追うためにU-NEXTの無料体験に入る羽目になった。

 

風が強く吹いている

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