オタクは世界を救えない

『ゾンビランドサガ』最終回感想、持っとらんアイドルと持っとるオタクの話

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 一ヶ月以上ぶりの投稿に、今期最強と名高いアイドルアニメの話をしようと思う。
 まあ正直誰が見ても普通に面白いしわざわざ語ることなくねーかって途中まで思ってたんだけど終盤の展開が俺好みなのでその辺に寄せた話をしましょう。

概要

 スタッフとかは全然知らないので割愛。
 設定としては、よくあるご当地アイドルアニメにゾンビを足してイロモノっぽくした感じ、というのが当初の印象。それが二話のラップパートからいきなり頭角を表し勢いの良さを見せつけてくる。その後、中盤からはアイドルアニメとしても完成度の高い展開を繰り広げて作中リアル共々人気を獲得する。ついでに正雄パートではありきたりなお涙頂戴エピソードを上手く調理することで自力の高さもアピール。そして最後にはさくらの“持っとらん”発言を筆頭に作品テーマへと繋がるお話で綺麗に締め。
 とっちらかっているようで高水準。ギャグかと思わせてホロリと思わせる展開。そして広げた風呂敷をほとんど畳まないのにそれを気にさせない勢いのあるストーリー。まあそんな感じ。要素が多いから一個ずつ取り上げてたらキリがないね。

持っとらんアイドルの話

 はい本題に入ります。11話にて主人公のさくらが記憶を取り戻し、なにをやっても報われない自分を指して繰り返し強調する「持っとらん」というフレーズ。ぶっちゃけこれ系のアニメだとちょくちょく見かけるテーマだとは思うんだけど、いかんせん今のところはまだ色褪せないオタク好みのテーマ。どこぞの「私には何もない」島村卯月を彷彿とさせる台詞だとしても構わないぐらいには永遠のテーマの一つだと言ってもいい。

 ただこれね、ゾンビランドサガの場合は某卯月と展開が一味違う。何が違うって、巽幸太郎の存在が違う。彼はさくらの「持っとらん」発言を、「お前が持ってなかろうが、俺が持っとんるんじゃい」と一蹴。そもそもさくらはゾンビになった時点で命すら持ち合わせていないアイドルであり、そのさくらがステージに上がる原動力として自らの秘められたあれとか誰もが持つそれとかを使えないのはある意味必然。そこで登場するよくわからん男のよくわからん期待が彼女をステージに導くのがこの辺のミソ。

 巽幸太郎が元々さくらのファン第一号だったことは回想で明らかになっている。なので「おれが持っとるんじゃい」というのも単に有能マネージャーが導いてやるという意味ではなく、ファンとしての巽がさくらへの期待を“持っている”という解釈をするのがたぶん妥当。
 そしてアルピノでのライブでは、他のメンバーの歌声や、フランシュシュがこれまで魅了してきたファンたちの手拍子に後押しされて、さくらが復活する。「思いに応えろさくら。お前の真の力は、追い込まれたときにこそ覚醒する」と巽が言う通り、さくらは基本的にスペックの高いアイドルではない割に、ここぞというところで活躍する。その“ここぞ”という場面にたどり着くまでが長いわけで、何度も死んで巽がお膳立てしてファンの期待があってようやくステージに立ったところで会場がぶっ壊れるトラブルに見舞われ、そうまでなっても思いに応えようと立ち上がることで彼女の力が覚醒する。
「何度でも何度でも立ち上がれ、諦めなければ終わりは始まりへ変わる」という歌詞がまさにそれで、この曲の歌詞は終始さくらというかフランシュシュの境遇を歌っているわけだけど、イロモノ的要素の意味合いが強かったゾンビという部分に大きな意味付けをしたのは本当に強い。人生の終わりが彼女たちにとっての始まりへ変わったのは、ゾンビになってでも立ち上がり続けたその心意気にあったというのは言うまでもないし、そんな彼女たちを後押しするエネルギーは彼女たちだけのものではなく、巽を始めとしたファンたちの熱意だったことも忘れないでおきたい。

巽幸太郎と“持っている”オタクについて

 では巽幸太郎がいかにしてさくらの代わりに“持っている”存在になったのか。まああのクソ短いシーンですべて説明がついているわけだけど、彼もまた始めは持っていなかったというのをちゃんと描写しているのが熱い。どこにでもいる学ラン着たつまんなそうな雑魚が女の子一人の笑顔に見惚れて謎のプロジェクトを開始するとかいうオタク臭いエピソードがこの物語の始まり。恐らくまあ、さくらがその生を終えたとき、巽はその終わりを始まりへ変えたのでしょうとそれっぽいことを言ってみる。

 作中の立場的な意味でも、ストーリー的な意味でも、巽幸太郎がもたらした功績は大きい。この男の物語がそこまで長く語られなかったのは正直残念ではあるが、そこで出しゃばらない辺りもいっそ影の立役者感がある。アイドルアニメでアイドル以外のキャラが立ってるのはお話的に素晴らしいことで、特に今作では巽以外のキャラ立ちも良い。初期から追っているデスメタルオタクにしろ、途中でファンになった様々なメンツにしろ、“持ってない”その辺の一般人が輝けるアニメ、それがゾンビランドサガ。あとロクな観光資源すら“持ってない”佐賀が輝けるアニメもゾンビランドサガ。何度でも立ち上がれ佐賀。

まとめ

 良いところを片っ端から挙げると大変なことになるので重要なとこだけまとめました。要するに“持っとらん”女の子が輝くために何度でも立ち上がるアニメは面白いということです。二期はやるんですかね。これを掘り下げようとするとまた毛色の違う話になってしまいそうだけどやるんだったら頑張ってください。

 

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