くだらねえオタクの話をする

『映像研には手を出すな!』感想、アニメを作りたくて死にかかってるオタクの話をする

映像研には手を出すな!(1) (ビッグコミックス)

 最近アニメで話すことがないから、代わりにアニメを作る漫画の話をしようと思います。

概要

『映像研には手を出すな!』(既刊三巻)とは、アニメを作りたい女子高生二人とお金を稼ぎたい女子高生一人が部活を立ち上げて自作アニメーションを作るお話。ちなみに作者の大童澄瞳は1993年生まれで今作がデビュー作。デビュー作のわりには作風がおっさん臭い。

 作品の特徴としてよく挙げられるのは、作中アニメの設定が異様に作りこまれていること。そしてアニメ作りの過程すらも作りこまれていること。あとはなにより、キャラのアニメ制作に対するこだわりがなんかすごいってとこ。

 作中アニメの設定はこんな感じ↓

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  たぶん記事中だと字とか細かすぎて読めないぐらいだと思う。こんな感じの見開きで設定画公開するのをかなりの頻度でやってくる。クリエイターものの作品は結構あるけど、ここまで作中作の設定を練ってあるものはそんなにないだろうし、毎度のようにこの情報量を繰り出してくることがこの作品ないしはこの設定を作っている浅草みどりというキャラクターの特徴を物語っていると思う。
 ただ、一応ここで白状しておくと、ぶっちゃけ俺はあんまりこの設定画を読み込んでない。というか割と読み飛ばしてる。だって読んでもストーリーには関係ないし、単純に好みの問題でこういうジブリっぽい世界観はそんなに好きじゃない。ただまあ俺の好みは置いとくとしても、この「ストーリーには関係ないのに労力はかかってそうなページ」というのが存在感放ってる。

キャラクター

浅草みどり

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 幼い頃から近所を冒険し、冒険から得られた妄想をアニメの設定画にするという、根っからのクリエイター気質を持った主人公。アニメを作る人間だが、絵を描くとか話を考えるというより「世界観」を作るのが好きなんだろうなという感じ。
 アニメ制作では監督を担当。アニメの設定を作ってスタートさせるのは浅草氏の役目であり、漫画のストーリーも彼女が動き回って始動することが少なくない。
 面白いのは、アニメっていういわゆるインドアの象徴みたいなもんを作るのに、彼女は冒険といういわゆるフィールドワークによって発想を得る。それは実際に外に出てるシーンもそうだし、作中でよく出てくる表現として、実際に作品の中に入って冒険しているようなシーンもある(特別な説明なんかはなく、自然と作中作の世界が現れる)。アニメを作るという行為そのものがアニメ的っていう。

水崎ツバメ

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 ネット上で水崎氏の紹介がなされる場合、ほとんど上のページが表示される。それだけ彼女を象徴付けるシーンがこれ。
 “チェーンソーの振動が観たくて、死にかかってる人がいるかもしれない”
 いや、普通に考えていねーんだよな。いるとしてもマジで少ないだろうし、そんなののためにリソースを割くのなんてアホでしょう。そのアホみたいなことに命をかけてるのが水崎ツバメ。アニメーター志望の彼女は、浅草とは反対に設定とかストーリーよりもアニメーションの「動き」を重視する。
 俺はアニメーションとか作画についてはありふれたオタクの領域を出ない程度なので、はっきり言ってチェーンソーの振動よりも女の子の乳首を見れた方が救われると思う。でもそういうのは関係ねえんだよなっていう。クリエイターの“こだわり”について、誰がそれを求めてるかとかそこにどんな意味があるかとか細かい理屈を抜きにして、それを見たい、あるいは描きたいと思っているから作るんだと、シンプルで強い理由付けをする。カッコいいね。

森さやか

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 プロデューサー担当。映像研の頭脳であり金稼ぎのためにアニメ制作に関わると言い切る金の亡者。
 他二人に対して、金森氏は一切絵も描かないし話も作らない。でも彼女がいないと映像研は成り立たない。思うに、金森氏がいることによってこの作品はアニメ制作だけではなく、アニメ製作にまで幅を広げられている。
 そもそも映像研が作るアニメは、

 一巻:映像研を生徒会に認めさせるための実績作りとして短期間で作れる5分アニメ
 二巻:ロボット研から依頼されたものに沿って作るロボットアニメ
 三巻:イベントで荒稼ぎするために作るアニメ

 というような感じで、特に一巻は作りたいものを作るのとはほど遠い。実際に制作担当の二人は要望の大半を切り捨てられている。しかしそういった環境の中で、「金を稼ぐ」という分かりやすく現実的な目的のために動く金森氏のおかげで、自分のやりたいこと以外ではわりとふわっふわしてるクリエイター二人が、ちゃんとしたプロジェクトの上で動いて一つの作品を完成させるまでに至っている。理想を追求したい水崎ととにかく作品の完成を優先する金森が衝突する展開は多いが、この辺もリアリティがあって面白い。作品内での役割分担が分かりやすくできてるなって思う。

 あと、金森氏は自分自身で「私が好きなのは金ではなく利益を出す活動です」と言っている。結局やってることは金稼ぎなので現実的なそれには変わりないんだけど、たぶんこの「利益を出す活動」を突き詰めてる彼女の行動原理は、目的こそ違うけれどクリエイター陣の見せる“こだわり”にだいぶ近い。
 だって金が欲しいだけだったらバイトすりゃいい話だしね。部活動を立ち上げて、変人二人をコントロールして、機材を用意して、敵対する陣営からクリエイターを守って、きっちりと利益を出す。普通にめんどくさいし、金が絡んでなかったらチェーンソーの振動描くのとどっこいな意味不行為だと思う。でもそれをやるのは、金森氏になんらかのこだわりがあるからでしょう。たいへん味のあるキャラだと思います。

 

こだわりについて

 上でもさんざん言ってるけど、ここに出てくる人間はどいつもこだわりが強い。

 一巻では時間が足りなくて、どうやって面白い作品を作るかよりも、どうやって工程を短縮して作品を完成させるかに重点が置かれていた(様々な手法を用いてなんとか作画枚数を削っていく過程は普通に面白い)。だから完成後に反省点がぼろぼろ出てくるのは当然と言ってもいい。

 二巻ではロボット研と折り合いをつけつつも自分たちの理想的なロボットアニメを作り、制作期間については一巻ほどの縛りはない。その中で作られた作品の上映会後、水崎は満足してなさそうな立ち回りをして、浅草は「やり残しは8割」とぼやく。

 そして三巻では、ほとんど縛りもなく自由に作品を作る。実際イベントは成功といってもいいぐらいの調子で、本人たちもそれなりの出来映えだと満足するかと思いきや、浅草は「まだまだ改善の余地ばかりだ」と一言。

 いつになったら満足すんだ、と思う。というか一生満足しねえんだろうなと思う。これだけ作品のクオリティを追求できる人間が将来大物クリエイターになったりするんだろうなとも。
 いや、これを読んでるとね、僕にもそんぐらいこだわりたい何かとそれに対する熱意があればよかったのになと思うね。ロボットでもチェーンソーでも金でもいいんだけどね、そういうのを持ってる人が読んだらまた違う感じにも見えるのかもしれないね。

あとあれ。三巻の最後で、効果音担当の人にちょっと妥協してもらったねみたいな話をしてて、もしかしたらその辺りで衝突とかあるんかなと期待してるってのはある。三巻が結構作りたいものを作れてる感があったので、そろそろ谷がきてもいいのかな。あんまりシリアスが出てきそうな作風ではないけど、アニメ制作的には上手くいかない時期があっても悪くないんじゃなかろうか。

まとめ

 実は漫画感想は初。だからといってなにかあるわけではない。あんまり脈絡なく普通に面白い作品の記事を書くってのはそんなになかったけど、まあいいんじゃないでしょうか。結構調べてみるといろんなところで取り上げられてる作品だけど、普通に面白いっすよ。絵柄とかフキダシの使い方とか独特なのあってたまに読みにくいけど、単純に作品にパワーがあるね。

映像研には手を出すな!(1) (ビッグコミックス)

映像研には手を出すな!(1) (ビッグコミックス)