オタクは世界を救えない

『Undertale』感想、誰も死ななくていいやさしいRPGの話をする

Undertale Soundtrack

 そういうわけで、主にSteamで販売されている(現在ではコンシューマでもプレイ可能)、『Undertale』というゲームの話をしようと思う。

 「誰も死ななくていいやさしいRPG」というのが本作のキャッチコピーであり、その言葉通りプレイヤーは敵を一体も倒さずともゲームを進めることができるし、逆に全員ぶっ殺してもゲームを終わらせることができる。メタ的な設定やゲームシステムで評価が高い上にプレイ時間も短くお値段も安かったので俺もちょろっとやってみたら確かに面白かったので、その感想とかを書いていきたい。

 ちなみに考察も攻略もやる気はないので本当に感想だけ手短に書いていこうと思います。ネタバレも少しはあると思うので気にする方は注意してください。

 

概要

 むかしむかし、人間VSモンスターの戦争で敗者となったモンスター勢は地下の遺跡に放り込まれ、バリア的な結界でその中に封じ込まれた。そこから出ることはまず不可能。しかし主人公の人間はどうしたことか山奥の入口付近で足を滑らせ地下へ真っ逆さま。そこから主人公は地下を探検し、地上へ戻る出口を求めて彷徨うことになる。……という冒頭。

 要するにモンスターがいっぱいの地下(Under)から出ようとする物語(tale)なのだけれど、他のゲームと違うのは、モンスターたちも地下で普通に生活を営んでおり、なんなら村人Aポジションにモンスターが出てくるような状態。もちろん地下なので登場するのは主人公以外全部モンスター。ただモンスター側にも色々あり、確固たる意志を持って主人公を襲ってくるモンスターもいれば、最初から好意的なモンスターまで様々。一応設定として、「人間をぶっ殺してタマシイを集めることにより、バリアを破壊し地上へ出ることができる」というルールがあり、そのために地下の王様やその幹部たちは主人公を捕えようとしてくるのだが、逆に言えばそれ以外の理由でモンスターが主人公を襲う必要はなく、逆に主人公も、自分からモンスターを倒そうとする必要があまりない。ちなみに俺は一週目の際めんどくせえから全員殺してやったのだけれど、モンスターたちの事情や素顔を知ってゲームをクリアする頃には、あくまでゲーム的なテンプレ行動のそれを後悔したりしなかったりしたものです。

 システムは基本的にRPGツクールで作られるような王道のそれ。しかし戦闘システムが少し特殊で、まず敵の攻撃はSTGのような弾幕が降ってきてそれをかわすタイプ。こちらの行動には、よくある「こうげき」「アイテム」などのコマンドに加え、「こうどう」といってモンスターに話しかけたりナデナデしたりするコマンドを使える。これを上手く使用することで、モンスターを倒さなくても前へ進むことができる。

三つのエンディング

 本作には中立ルート、平和ルート、虐殺ルートの三つのエンディングが用意されている。それぞれプレイ時間は4,5時間ほどなので、すべてクリアしても20時間かからないぐらいのボリューム。それぞれのルートは主にモンスターをどれだけ倒したのかが基準になっており、特に平和ルートではモンスターを一体も倒さずにクリアすることが条件となる。

 で、俺なんかは最初これを、ノーマルエンド、トゥルーエンド、バッドエンドの意だと思い込んでいたのだけれど、それがわりと違うっぽい。まあ確かに平和ルートが一番ハッピーでトゥルーって感じはするけども、じゃあ平和ルートさえあればいいのか? というと少し違う。なんなら虐殺ルートの方が物語の真実に近づいてる感がある。

 また、モンスター=殺す対象というメタ的な思考を否定しようとするのが本作の醍醐味でありそれこそが平和ルートへの道であるにも関わらず、平和ルートがそもそも一週目では絶対にいけない仕様になっており、二週目でフラグを解除し知識を活用した上で、つまりメタ的な行動をとらなければ、平和ルートに辿り着けないというのも皮肉なもの。「誰も死ななくていい」RPGであって「誰も死なせてはいけない」わけではないところに注目すべきだと思う。ラスボス前のマップに存在するとある鏡を覗くと、主人公が映り、「いろいろあったけど、じぶんはやっぱりじぶんだ」というようなモノローグが流れる。自分は自分なのである。別に誰かを殺した上で物語を進めているのもそれはそれで一つの選択なので、決してこのゲームが安直に非暴力主義を掲げているわけではないことは考慮しておきたい。まあ作者の気持ちを考えるフェイズは俺も考察記事を読んでやっていきたいとして、とりあえずゲーム本編をプレイして自分の気持ちに真摯になってみるのもいいと思う。俺は攻撃的なオタクなので危うく初回から虐殺ルートになりかけたが、パピルスだけ生き残らせてしまったのが俺の心の中途半端な部分だと思っている。

作者について

 製作者はToby Foxとかいうアメリカ人ほぼ一人。Steamで販売しているわりにものすごく和製っぽいのなんなんだと思っていたら、元々彼はJRPGが好きで、「MOTHER」だとか「女神転生」辺りに影響を受けているのがその由来らしい。ちなみに「東方Project」にも影響を受けているようで、戦闘システムにSTG要素があるのはそういうこと。

 ちなみにTobyさんはこのゲームがほぼ処女作らしく、それでこんだけ結果を残してしまう辺り俺はこいつに一番殺意を抱いていると言っても過言ではない。承認欲求のモンスターに少しでもそのタマシイを分けてほしい。

 まあ彼はJRPG大好きマンゆえにメタ的な視点で参入し、更に発展させたゲームを製作しようとする中々かっこいい意思を持っており、その辺は一人のユーザーとして多くのクリエイターに期待したい精神である。ただまあメタ要素を使った作品ってのも元ネタありきみたいなところがあって、結局元の枠組みから出れてないんじゃないの? って感じも少しある。一発ネタになりやすいしね。でもまあ、憧れた作品と同じようなものを作ってばかりいちゃマジで似たような作品だらけになってしまうのでそういうクリエイターは本当に貴重だと思う。

 ちなみに、本作によく似たゲームとして「moon」が挙げられる。

MOON

 1997年にPSで発売された作品で、その界隈だとかなり有名で評価も高い。これはそもそも戦闘という概念がないゲームで、ゲームの世界に実際に入り込み、「主人公」がバッサバッサとモンスターを切り殺していくのを横目に見つつプレイヤーはNPCと対話をして戦闘以外の方法で物語を進めラブを集めていくお話。モンスターを切り殺していく「主人公」を批判するメタ要素がバリバリのゲームで、ぶっちゃけテーマがUndertaleとだいぶ被っている。なんならパクリかな?とも思えるレベル。まあテーマ以外のシステム部分とかは全然違うしmoonは博愛寄り、Undertaleはダーク寄りな点で同じジャンルの別ゲーだってことはわかる。ただ根幹になる「モンスター殺さなくても良くね?」の精神は本当に近いものがあるので、Undertaleを気に入ってmoonを知らなかった人は手を出してみてもいいかもしれない。アーカイブ配信とかあるのか知らないしそもそも俺も実況で見ただけなんだけどね。

雑感

 そういうわけで、まあ面白いゲームなのは確かでしたね。特に考察とかは捗りそうなので、記事は自分でも漁ってみようと思ってる。

 最近はゲームっていうとFPSとかモンハンとか、ストーリーのないものばっかりやっているのでこういうのは久しぶり。まあ正直ストーリー性を求めるのならハナから小説漫画アニメでいいやんけ、って思うタイプのオタクなのであれだけど、それでも本作に関しては「ゲームならではの」表現方法が多く盛り込まれてて、こいつうめえなあって思いながらやれた辺りシンプルにクオリティが高いとも感じる。

 あとあれね、BGMに良作が多くて、Toby氏は本業は作曲家らしいので、そういうことかと。サントラがちょっとほしい。