くだらねえオタクの話をする

『さよならの朝に約束の花をかざろう』感想と岡田磨里の話をする

映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』オリジナルサウンドトラック

 

 さよならのあれを見てきたのでその感想を話してみたいと思う。ちなみに公式の略称は『さよ朝』。なんというか普通ですね。

※前半は紹介、後半からネタバレ有りの感想になります。気にする人は注意してください

概要

・岡田磨里

 劇場版オリジナル作品のさよ朝。前評判として特に注目されていたのが、脚本家として知られる岡田磨里の初監督作品であるという点。岡田磨里といえば一部では「マリー」とか呼ばれて親しまれる有名脚本家で、さよ朝を語るに当たってこいつを避けて通ることは難しい。代表作品としてよく挙げられるのが『あの花』『ここさけ』。それ以外でも『とらドラ』やら『花咲くいろは』、最近では『凪のあすから』やら『迷家(マヨイガ)』やらと、結構色々やっている。某花田十輝なんかは脚本のみ担当の作品が多いのに対し、岡田磨里はオリジナルアニメの原案やらシリーズ構成やらの段階から任されている方がメイン。青春モノを得意として恋愛描写や思春期特有のソレみたいなものをよく描いている人間で、三角関係的なドロッとしたものもよく扱う。

 個人的な印象を一つ言わせてもらうと、いわゆるマンコ的なライターだなと思っている。(三角とか四角とかの)多角的な設定を考えるのが上手く、負の心情描写にとても力が入っている。その代わりに話運びが犠牲となっていて、最終的にストーリーが迷子になっているようなものもある。いうて経験値が圧倒的なだけあって、単純なクオリティは非常に高く、あくまでも俺の印象はそういう傾向があるってだけなのを自分で調べてみてちょっと思った。(とらドラとかマリーなのは初めて知った。とても面白かったです)。あと俺が三角関係苦手ってのもある。

 ちなみにさよ朝と同じ劇場版オリジナルであるところのここさけなんかは普通に面白かったですね。主人公がメインヒロインと結ばれずに結局元の片思い相手(あまり可愛くない)の方に落ち着くラストは非常にマンコ的だなと思ったものだけど、ストーリーなんかは学園モノとしてかなり安定していて、下手なお涙頂戴に走らず綺麗めな風呂敷の畳み方をしている辺り、一般人に大人気(オタクには賛否両論)なあの花よりもかなり好感度は高い。

・作品について

 で、さよ朝自体はどうなのか。まず一言でいうと、面白いです。俺の好みではここさけの方が好きだけど、作品自体の面白さで言ったらこっちの方が上だと思う。ぶっちゃけここ最近の劇場版アニメの中でもトップクラスに強い。いつもの学園モノと違ってファンタジーなので、シナリオだけでなく演出なんかがすげー映えるなという印象。見といて損はないと言ってもいいですね。

 舞台は中世ファンタジー的な世界。主人公たちはイオルフの民と呼ばれる長命(ほとんど不老)の一族で、一般人からは伝説上の扱い。それがなんか王国の企画によってボッコボコにされて主人公の親友は拉致監禁一人ぼっちで運良く逃げ延びた主人公は、なんかその辺で拾った天涯孤独の赤ん坊にめちゃくちゃ感情移入して自分が育てると決意。そうして主人公は素性を隠しつつ、自分と同じで一人ぼっちのクソガキの母親として成長していくとかそんな感じ。

 イオルフの民は、別名「別れの一族」とも呼ばれる。長命なために、普通の人間と関われば絶対に人間の方が先に寿命を迎えることになる。別れからは逃れられない。だからイオルフは他の人間と愛し合ってはならないとされ、人里離れたよくわからん地域で細々と暮らしている理由の何割かもそのため。

 そんな中で主人公はパンピーのガキを育てる決意をしたわけだけど、その途中でいくらでも困難は訪れる。単純な子育てのそれもそうだし、イオルフの民としてその存在を隠しながら生活することが拍車をかける。まあ見た感じ、話としては母親と息子の絆を描いて、その障害に長命云々とかを扱っているような割り合い。更にいうなれば、人と人との別れがやっぱ重要になってくるお話で、そこで一番絆が深いであろう親子のそれを表現の対象に選んだのかなってのもある。親子ってのがやっぱ関係としては最も強いもので、でもやっぱりそこも寿命が来たらお別れとなってしまう。その辺をどう捉えていくのかってのがタイトルにもあるとおり「さよならの朝」にどうしましょうかってことだと思う。

 約束の花を飾る行為に関してはいってしまえばありがちなまとめ方でもあると思うんだけど、岡田磨里の強みはそこに至るまでの描き方。特に群像劇染みたやり方として、主人公はもちろん拉致監禁調教レイプされた親友のあいつだとか、なんか変な金髪野郎だとか、その辺のいくつかの視点から別れだとかそいつとの思い出だとかの考え方を描いていく技術がやっぱり強いし安定している感じ。あとあれだね、子供に関しての考え方ってのがやっぱ良い意味でも悪い意味でもマンコ的で、特に例の親友が関わってくる辺りにマンコ特有の匂いが香ってくる部分があったりする。俺はそこがあってもなくてもとは思ったけど、お話のオリジナリティとして、他作品と差別化をできる強みにも繋がっているのかな、とも思う。

ここからネタバレ感想

 そういうわけで、まずタイトルの回収から。つってもうろ覚えなんだけど。

・さよならの朝=お別れの日。

・約束の花=エリアルと交わした「もう泣かない」の約束

・かざろう=なんか景気の良い感じ。

 という感じなので、まあお別れの日でももう泣かないで笑顔でいきまっしょいみたいな意味だと思いますね。はい。

 別れを避けてきた一族であるイオルフだけど、決して別れは悪いことだけではないんですよー、あなたと過ごした日々はずっと私と一緒にありますよー、ヒビオルに織り込まれた思い出は消えないですよー、ってこと。

 冒頭で一人ぼっちになったマキア、拾われたぼっち勢のエリアル、あと終始ぼっちのレイリア、それから最後の最後までぼっちで死んでいったクリムなどと、ぼっちに困らないキャラクター勢。一人ぼっちはまあ辛いんで、誰かしらと繋がりたいんだけれども、それはそれでいつか別れる日が来るのでどうしたことやら。

 「別れ」を描写するのがマキアとエリアル担当で、「一人ぼっち」の描写を終盤まで続けたのがレイリアなわけだけど、一人ぼっちのレイリアが一番最後で自分の子供に「私のことは忘れなさい。私もあなたのことは忘れるから」と言ったのに対し、マキアが「大丈夫、忘れないよ」と返したのが印象的。レイリアは娘と別れるぐらいならそもそもなかったことにした方がいい、つまり別れを恐れたからそういうことを言ったのだけど、逆に一連の別れってやつを体験してそこにアンサーを出したマキア的には、別に今現在一緒にいなくても、思い出に残ってヒビオルに刻まれていれば別れなんか怖くねーよ、ってこと。まあそんなことを言ったマキアも、ラストでエリアルと死に別れた際に号泣してしまうのは、さすがにつれーわって感じ。

 ただ花を飾ったり送ったりって現実でも良い意味のときと悪い意味のとき両方に使うよね。お祝いに飾るのはもちろん、お見舞いとか、葬式とか、そういうのでも使う。ただ後者はどちらかというと、悲しいからってよりは今後の回復を、あるいはあの世での冥福を、って意味だから、それなりに未来を見据えてる様子。泣き虫のマキアが、さよならの朝にもう泣かないぜっつって景気よく花を飾っていくスタイルを得るまでの物語がなんと115分もかけて描かれているのがそういうこと。

 余談だけど、やっぱり尺って正義だよなと思う。一定以上のクオリティがあって、描く必要のある要素が多いのであれば、60分とか90分の劇場版よりも120分あるやつの方が絶対に面白いですよね。さよ朝は時間に見合った、あるいはもっと長くやってもよかった類の良作と言っても過言ではない。

 それからちょっと可哀そうなのがさらっと死んでいったクリム君。こいつマジで死んだだけなんだよな。寝取られた女を一生賭けて取り戻そうとしたら、向こうからは間男の子供がいるから無理とか言われて憤死するおじさん。ただこいつの敗因は、楽しかった頃の思い出ばっかり引きずって別れを拒絶したところ。かといってあのシーンでいきなり開き直って間男のチンポから放たれた子種によって生まれし連れ子も一緒に愛してあげる!なんて言えるような男とか中々いないと思うので、こいつに関しては脚本に殺されてしまったどうしようもない存在としか言いようがない。

 正直レイリアの拉致問題に関してはメインストーリーじゃないからとおざなりに扱われてしまってる感は少しあって、まあ単純に描写が少ないというのもあるのだけど、終始意味ありげにレイリアに付きまとっていた杉田智一なんかは結局なにも役に立たねーボンクラだし、マキアも自分の子育てに必死で、王国に拉致監禁中出しロイヤルレイプされていたレイリアのことなんか途中からすっかり忘れちゃってたのはさすがにあれかなと思うので、この辺を突っつこうとするとボロが出てきてしまいそうになる。せめてマキアがレイリア問題をほとんどスルーなのには、クリムから解雇されたシーン以外にも何かしら理由付けが欲しかったとは思わなくもない。

雑感

 まあ面白い作品なんでね。これはいいことですよ。宣伝とかにもっと予算出てれば結構盛り上がったんだろうなと思いますね。

 最初見たときは、そもそもファンタジー中世の設定の時点であんまりマリーっぽくはないなという感じで、実際に中身を見て子育てをし始めたあたりで「細田守にマンコを付けた感じだ!」とまで思ったのはマジ。ただしっかり見ると岡田磨里だったので、マリー好きもたぶん満足でしょう。

 俺自身はマリーが特別好きというわけでもなく、ついでに言うと別れだとか死生観だとかいうテーマも大して好きではないので、好みの問題だと本来この作品はそこまで愛着を抱くものではないはず。ただそれでも結構見終わった後は自分の中で盛り上がったので、やっぱり作品として単純に強い作品だったということ、そしてそれを作れる岡田磨里という女がやり手だったということが如実に表れているんでしょうね。

 

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